梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その25|桐生/足利に見るものづくり遺産の残し方(10)<ノコギリ屋根工場の赤レンガ工場(㈱トチセン/旧明治紡績工場跡)①>

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

桐生/足利に見るものづくり遺産の残し方(10)<ノコギリ屋根工場の赤レンガ工場(㈱トチセン/旧明治紡績工場跡)①>

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東武伊勢崎線「福居」駅前にある㈱トチセン(栃木整染)の工場。織物輸出が全盛の1913(大正2)年に、大量生産を目的に造られた大型の近代的な足利織物の工場で、1919(大正8)年に明治紡織となり、長い間「明紡」として市民にも親しまれてきました。

赤煉瓦造りの工場としては、野州山辺駅前にあった旧足利紡績工場が解体されてしまった現在、市内では唯一のものになってしまいましたが、ここは、いまも繊維関連の業務を継続している現役の工場です。

赤煉瓦の工場としては、サラン工場、捺染工場、汽罐室(ボイラー室)の3つの建物が残されていて、どれも平屋建て。使われている煉瓦はイギリス積み、いまはない埼玉県深谷市上敷免の日本煉瓦製造で作られたものです。3工場とも、登録有形文化財に指定されています。

東武線で足利から乗ってくると、電車の窓から右手に黒い模様が入った赤煉瓦の建物が見えてきます。これは工場の東側に建つ南北に長いサラン工場で、切り妻の洋瓦葺き。窓枠は石材で作られています。黒い模様は、戦争中に、太田にある中島飛行機めざして飛んでくる爆撃機用の迷彩がそのまま残されているものです。窓が上下2列あって2階建てのように見えますが、中は平屋建て。

敷地の中央にある6連のノコギリ工場は捺染工場で、外壁に突き出た柱のデザインがユニーク。安全を祈願して小さな祠が祭られている。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!