梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その32|<竹中大工道具館>(1) 大工道具の変遷

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

<竹中大工道具館>(1) 大工道具の変遷

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奈良・京都で古刹巡りをする際に寄ってほしいのが、新神戸駅から数分のところにある竹中大工道具館。北野の異人館めぐりから三ノ宮に向かう起点としても、悪くないロケーションなので、おすすめのです。

ここには、木工の大工道具はもちろん、ノミ、カンナ、ノコギリなどの打ち刃物などの名工作品と、神社や数寄屋造りの細工などが展示されています。

なによりも興味深いのは、むかしの大工が使っていた宮大工の道具一式。天保12年(1841)に、桃山天満宮の社殿を建てた大工の道具一式はその数59点(写真:同館常設展示図録より)がセットで展示されているのです。

フランスの大工の道具も紹介されていて、1702年に発行された「大工仕事の芸術」に、小屋組みに使われる道具40点が再現・展示されています。

昭和13年(1943)に大田区で大工道具の調査が行われていて、本格的な建物を作るに必要な道具は179点、どんな安普請でも最低限必要な道具は72点だったそうです。

本格的な建物造りと安普請の大工道具の差は、ノミとカンナだそうで、本格的な建築では49点、40点と多かったのが、安普請では大幅に減っているそうです。細かい細工が建物の優劣を決めているということですね。

最近は電気道具なども増えてきた、変わったと思いますが、
正式にそろえると、こんなにもたくさんの道具を持っていたのかとおどろきます。これを砥いでいつも使える状態にしておくのは時間外の仕事。江戸時代の大工は誇りを持った職人だったと言われるのもうなづけます。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!