梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その43|1000年たっても香るヒノキ

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

1000年たっても香るヒノキ

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薬師寺の東塔の解体修理でのこと。

屋根の瓦を外したら、その下にあったヒノキの板が少しずつ反り返ってくる。1300年を経た木材が、重しを外されたら、復元力で反発して毎日少しずつ反ってきた。ヒノキは1300年経っても生きている…と西岡師はいいます。ヒノキは時間がたつとともに、それなりの風格を身に着けて生き続けるのですね。

法隆寺、薬師寺など1300年を超える建造物があり、法隆寺の木材は当時のままですが、伐採されて1300年たったそのヒノキは、いまでも5,6ミリ削るだけで、香りがぷーんと匂ってくるそうで、樹齢1000年を超えるヒノキは、伐採されてからも、樹齢と同じくらい生き続けると言われています。

法隆寺など、柱は基本的に耐久性重視で使われています。

柱など、見た目は節のない部分がきれいですが、丈夫さという点では問題があり、長持ち、頑丈さという点では節がある部分にはかないません。建物の正面は顔ですから節のないきれいな面を使いたくなりますが、実は建物は南面が正面、そのために法隆寺などでは、節の多い面が表に使われているのです。

飛鳥時代の寺社建築の基本は、素材は生えている状態に忠実の使うこと。南面には、木材の南面を使うというのが、適材適所の原則です。木材が生えていた時の南面は節の多い面なので、日の当たる南面の正面には節の多い木材が使われることになります。

最近は、施主がそういうことを無視して、正面には節のないきれいな材を使ってくれ・・・と言われることが多いそうです。

きれいな木材を供給することで知られる吉野の杉は、建造物用に造林されたもの。なので、節を少なくしてきれいな木材を得るために、若いうちに枝を払います。しかし、枝を払ったあとの切り跡から水が入り、その部分は腐ってしまいます。これを「死に節」と呼ぶそうで、力がないために、抜けてしまいます。

一方、枝を払わずに、伐採されるまで枝が出ていた節は生き節といい、しっかりと目が詰まって削るとピカピカする本来の節です。生き節のあるものは耐用年数が長いとかで、腐りにくいので建物の土台な度に使われることが多いようです。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
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