梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その49|1000年で考える飛鳥人のスケール感

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

1000年で考える飛鳥人のスケール感

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薬師寺は、東塔が残っていて、西塔はそれにならって後から再建しました(写真)。

再建するにあたっては、現在の姿で同じ物を作るのではなく、年代を経て現在の東塔と同じ状態になるようにめざしたそうです。

だから、再建された西塔と東塔を比べると、見た目にはわからりませんが、実は大きな違いがあるのです。

礎石の上から塔の頂上までが、東塔は11丈6尺。西塔は11丈7尺2寸と、1尺2寸ほど西塔が高くなっています。

東塔の方の組物が、1300年のあいだに、もまれ、揺さぶられて圧縮され、改築されて低くなっているから、その分を見越して、「西塔の方も1300年たったら、だいたい東塔と同じ高さになるやろということですわ。新しい木やから、それでいいんです」と西岡棟梁。

このスケール感、圧倒されますが、その基本には、自然に対する畏怖の念があるように思えます。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!