梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その47|台石・礎石にのる建物

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

台石・礎石にのる建物

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縄文以来、長い間、建造物は掘っ建て小屋でした。大陸から大型の寺社建設のノウハウが伝えられたときも、初期の建物はすべて掘っ立て小屋でした。

掘っ建て小屋とは、地中に深く柱を埋め、周りを固めて固定する形式です。平城宮の遺跡を調べると、建物の遺構には礎石がなく、土の中に穴を掘って柱を埋めた掘っ立て小屋だったことがわかります。

しかし、この方式だと、地中に埋めた柱の根元が湿気を吸収して腐り、建物がゆがんできます。そこで、重い建物を載せても沈まないようにしっかり土を固めて基盤を作り、その上に大きな石を置いて、建物の柱をその礎石に乗せる形式が採用されました。

現在もこのやり方が踏襲されていて、100トンもの重さになる法隆寺の五重塔も、金堂も、南大門も、みんなこの方式で作られています。

写真は法起寺の本堂です。大きな寺社ではわかりませんが、この規模の寺社では、よく見るとこんな風になっています。建物は石の上に載っているだけで、固定されていないのです。それでも風雨にさらされて柱の基部は時間とともに痛んできます。

その時は、傷んだ部分だけを修理し、柱そのものはそのまま使われます。法隆寺などでも、よく見ると、下部の一尺余りが新しく継ぐ足されているものがあったちします。お出かけになった際には、そんな柱も見つけていただくと、楽しいかもしれません。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
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