梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その71|絹の道――横浜への最短のアクセス道

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

絹の道――横浜への最短のアクセス道

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片倉から大塚山公園に入ってしばらく登ると、左に石段が見える。上がるとそこはかつて道了堂があった境内である。

この道了堂から、鑓水村への入り口までの1.5kmは、平成8年(1996年)に文化庁が選定した歴史の道・百選の「27 浜街道―鑓水峠越」として登録されている。

この道が「絹の道」と呼ばれるようになったのは、昭和32年(1957年)地元の橋本義夫氏が鑓水商人の功績を記念して、道了堂への上り口に「絹の道碑」を建てたことによる。その後、昭和60年(1985年)、道了堂から鑓水峠下までの区間を、八王子が「絹の道」として史跡に指定した。

両側に木が迫る細い道は、いまも舗装されずに昔の面影を伝えている。狭いところでは、道幅2-3メートル、大きな石が転がり、雨水の流れでくぼんで、2人が並んで歩くのもやっとである。デコボコで大きな石が転がる。

馬と行くのも一苦労しそうだ。当時はこの道を、人が生糸を背負い、荷駄で運んだ。とても馬車を引かせられる道ではない。横浜まで十里と少し(約40キロメートル)。

早い人は一日で歩いたと言うが、150年以上さかのぼる当時に、重い荷を背負った旅は困難だったろうと想像できる。

八王子、町田、横浜と都会に近いわりに、豊富な自然が残されているこの道は、休日ともなれば、ウォーキングや歴史探訪のグループでにぎわう。舗装もされていない山道、しばしの時代劇の旅人気分に浸るのも悪くない。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
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